
【書籍重版(増刷)の御礼&コンサルタントインタビュー vol.2】事業承継だけではない! ホールディング経営とは
はじめに
タナベコンサルティングのトップコンサルタント、中須 悟(経営コンサルティング本部 九州本部 副本部長)の著書『ホールディング経営はなぜ事業承継の最強メソッドなのか』(ダイヤモンド社、2018年)が、皆様からご好評をいただきまして重版となりました。多くの方にご支援いただいておりますことを、改めて厚く御礼申し上げます。
重版に際し、ホールディング経営のメリットについて、改めて中須にインタビューを行いました。ホールディング経営を通じて社会課題を解決しようと日々奮闘する、中須の思いがつまった内容となっております。
経営者の方、必見の内容となっておりますので、ぜひご一読くださいませ!
目次[非表示]
- 1.これまでのキャリアを教えてください。
- 2.ホールディング経営のプロフェッショナルになったきっかけは?
- 3.「複数の目的を同時並行的に解決する手段」とは、どのような意味でしょうか。
- 4.ホールディング経営によって企業価値が高まり、事業の拡大や承継以外にも良い影響を及ぼすことができるのですね。
- 5.コロナ禍の影響で多くの企業や業界が苦戦を強いられている現状においても、ホールディング経営は強みを発揮できるのでしょうか。
- 6.著書のタイトルで、ホールディング経営は「事業承継の最強メソッド」であると提唱されています。近年、事業承継は多くの企業が抱えている課題ですが、ホールディング経営と事業承継は、どう関係するのでしょうか。
- 7.本書を通じて、読者である経営者・リーダーの皆様に目指していただきたい「企業のあるべき姿」とは?
これまでのキャリアを教えてください。
- 財務の専門コンサルとして入社。入社当時から事業承継のニーズが増加してきており、税理士事務所や金融機関などの専門機関とは違った角度で事業承継コンサルティングに取り組みました。その中で、ホールディング経営というスキームを、経営者のニーズとタナベコンサルティングのソリューションに基づき、独自のスタイルで開発。ホールディング経営スキームは「K-1賞」(タナベコンサルティングの社内表彰制度)で優秀賞をいただき、その後、書籍を2冊上梓する機会に恵まれて活躍の幅が全国に広がりました。
ホールディング経営のプロフェッショナルになったきっかけは?
- 事業承継コンサルティングをしている中で、多くの経営者がホールディングのスタイルに興味を持っていることを知り、深掘りしたことです。ホールディング経営スキームを研究していくうちに、このスキームは一つの経営目的ではなく、複数の目的を同時並行的に解決する手段であることに気づき、総合的な戦略として取り組むようになりました。
「複数の目的を同時並行的に解決する手段」とは、どのような意味でしょうか。
- ホールディング経営はサステナブルな企業を目指すための戦略です。企業を完全子会社化するというよりも、事業会社同士がパートナーとして横並びになるイメージを、まず持っていただければと思います。ホールディング化とは親会社と子会社の縦の連携のみだけではなく、親会社と事業会社が一丸となって大きな社会課題解決の向かうことにより、これまで以上にダイナミックな企業発展を可能にするものです。また、大きな社会課題の解決に向けた理念を打ち出すことで、親会社や事業会社の従業員のモチベーションが向上したり、理念に共感する人材が増えて採用の母集団が拡大したり、事業会社同士のシナジー(相乗効果)でこれまで着手できなかった新規事業開発が可能になったりするなど、事業規模の拡大以外にも複合的に課題を解決できるのです。
ホールディング経営によって企業価値が高まり、事業の拡大や承継以外にも良い影響を及ぼすことができるのですね。
- はい。企業が発展していけば、人材の活躍の場も広がります。世の中に良い影響を与えるというダイナミックな理念を打ち出すことにより、自社をこれまで以上に魅力的な会社にできる。それがホールディング経営の神髄だと考えております。
コロナ禍の影響で多くの企業や業界が苦戦を強いられている現状においても、ホールディング経営は強みを発揮できるのでしょうか。
- コロナ禍はあらゆるモデルに変化や進化を要求している側面があります。そういった面でも、ホールディング経営は今の時代にマッチしていると言えるでしょう。他社をパートナーとして迎え、新たな事業を創る――それは、新たなシナジーを生み出すということだからです。私のクライアントで、コロナ禍を理由にホールディング経営を中断した企業はありません。
畜産業A社の事例をお話ししましょう。牛の飼育と牛肉生産を手掛けるA社は、食肉がお客さまの口に届くまでのサプライチェーンに課題を感じていました。そこで、肉の卸売会社と販売会社をホールディング化。肥育から外食産業までをワンストップで提供することにより、提供スピードを上げ、生産コストも管理できる体制を構築しました。A社は畜産業に革命を起こし、世界的なモデルにもなっています。
このように、自社単独では解決が難しい社会課題をクリアできるのが、ホールディング経営の大きなメリットです。ホールディング経営は、中長期的なビジョンを実現するスタイルであり、企業がグループ経営体として大きく進化できる手段なのです。
著書のタイトルで、ホールディング経営は「事業承継の最強メソッド」であると提唱されています。近年、事業承継は多くの企業が抱えている課題ですが、ホールディング経営と事業承継は、どう関係するのでしょうか。
- まず、本書で言う「事業承継」とは、後継者選定や相続税対策といった目先の課題解決策ではなく、企業を長期的に存続させるための戦略です。そして、企業が長く続くためには、持続的に成長し、段階的に進化を繰り返してゆく必要があります。
一方、ホールディング経営は、企業を存続させるために組織を進化させるスキームです。このスキームづくりを通じて、複雑な事業承継問題に道筋を付けることができます。その意味で、ホールディング経営は事業承継の最強メソッドなのです。
事業承継に直面している企業は、一つ一つの問題を個別に解決してゆくのではなく、大きなスキームを描き、総合的に解決するスタンスを取ってもらいたいと思います。
本書を通じて、読者である経営者・リーダーの皆様に目指していただきたい「企業のあるべき姿」とは?
- どの分野でも国内マーケットは成熟化しており、多くの企業が伸び悩んでいますが、そういった環境下でも持続的に成長できる戦略を描き、実行していただきたいです。また、その過程で、多くの経営者が育つ組織づくりも行っていただきたいと思います。
世界はまだコロナ禍下にありますが、そのようなときこそ、長期的な視点に立って、アフターコロナのビジョンと戦略を明確に描くことが大事です。共にファーストコールカンパニー(100年先も一番に選ばれる会社)を目指しましょう。